「極短小説」にインスパイヤされたのでここにショートショートなノベルを記します。
福岡に出張したとき、「昔、よくテレビで流れていた満員電車の風景って、もうないのですよね」
と九州支社の事務員がつぶやいた。残念ながら、日常の日常なのである。
満員電車に乗り、会社に向かう。そして満員電車に乗り、家路につく。
路線によって様々だが、多くのJR、私鉄での通勤・通学の時間は苦痛である。
特に梅雨の時期と真夏、そして冬。室内温度と外気温の差が乗客の肉体的精神的バランスを奪っていく。
しかしながら、慣れた人々はそれぞれの過ごし方を持っている。
ひたすら音楽にのり、体をゆらす若者。
器用に新聞を折りたたみ、文字を追う熟年の会社員。
mp3プレーヤーで語学学習するビジネスマン。
一目を気にせずマスカラを付けるOL。
携帯電話でニュースをチェックする若手社員。
携帯ゲームに夢中な浪人生。
ツワモノはおにぎりをほおばっている。
私にとって、中づり広告が唯一のメディアである。
目のやり場に困ったら、中づり広告を見ればいい。
とてつもなく退屈だが、両手を吊革にのばして。今日もすました顔してみる。

(絵:文 ©ハヤテノコウジ)
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