「極短小説」にインスパイヤされたのでここにショートショートなノベルを記します。
寺内ジンベエ、77歳。孫のいる大船まで向かう途中。
自宅のある赤羽から乗り込んで池袋を過ぎる。
早く会いたい一心で、9時前に家を出た。
ラッシュというのが終わっている時間帯だと思ったが、
とんでもなかった。
まだまだひどい混雑である。
だいたい電車を降りる人がいるかと思えば、また乗ってくるのである。
車内の中ほどにも人がたくさん立っているので座るタイミングがわからない。
赤羽をほとんど出たことがないジンベエだったが、
乗り換える必要がないので大船には行ける。
それでもいつもは昼ごろ乗車するので、座ってのんびりできるのであった。
「混雑してまいりましたので冷房を強めさせていただきます」
という女性車掌のアナウンスを聞いたとたん、なんだかトイレに行きたくなった。
小はもちろんのこと大もちょっと感じる大小な感じだ、あは。
と一人で笑ってみようかと思ったとき、電車が揺れて
すこしちびった。
ちびる程度か。大丈夫かなと思ったが、路線図を見上げるとまだまだ先は遠い。
やはり行っておこうとトイレを探す。
7号車にそれはない。
「すみません、トイレがある車両ってどこかな」
と隣のにいさんに聞いてみたが、ヘッドフォンで聞こえないようだ。
「あの」と前のお姉さんに聞こうと思ったが、あまりにもゲームに熱中しているのでこわくなってやめた。
トイレってのははじにあるに決まっている、ととにかくはじの車両に行くことにした。
「すみません」といいながら、モジモジと人をかきわける。
8号車は弱冷車両なのでよかったが、
9号車、10号車は冷えすぎで、さらにトイレはどこじゃ!
ジンベエ、10号車にはまいった。
部活の試合かなんかあるのか、ボールバックや大きなバックを床に置いた高校生がわんさかいて、
「泥沼を歩いているようだった」と、あとで回想している。
11号車にやっとたどりついたジンベエ、トイレに入る直前に少し、ちびるもなんとか安堵。
大船駅のホームには娘と孫がいた。
この話をすると、「トイレは5号車、6号車にあったのよ」と娘。冒険は終わったのだ。

(絵:文 ©ハヤテノコウジ)
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