スモークサークル(ショートショート、極短小説)

 

「極短小説」にインスパイヤされたのでここにショートショートなノベルを記します。
 

東京街角シリーズ
 
 
 

駅のホームから煙が消えた。

酒に酔って自分を見失っているオジヤンは、喫煙所がかつてあった場所でまだ吸っている。と思ったら、パイポだった。

駅を出たその先に、煙の輪が広がっている。

「歩行喫煙禁止区域です」「迷惑を考えましょう」といった立て看板の下で、低めの灰皿が立っている。

まわりには人。20代の、30代の、40代の、50代の、60代の男女が、均等に間隔をあけながら味わっていた。

吸いながら遠くを見つめる人々。

その様子を会社のリフレッシュルームから眺めたヨーコは、昨年の夏休みに訪れた英国の「ストーンサークル」を思い出した。古代、誰が立てたのかミステリーが残る遺跡と、現代、なぜニコチンを注入し続けるのかミステリーが残る喫煙者、2つがシンクロした。

人と石の立ちつくす様が、その影のでき具体が似ていた。

20年後、歴史の教科書、現代史あたりのページに、この様子が紹介されていた。写真のキャプションには「スモークサークルを組む人々」とあった。
 
 
 スモークサークル(ショートショート、極短小説)

 
 

(絵:文 ©ハヤテノコウジ)

家族のキロク(ショートショート、極短小説)

 

「極短小説」にインスパイヤされたのでここにショートショートなノベルを記します。
 

東京街角シリーズ
 
 
 
こいつも大きくなってきたなぁ。いっちょまえに生意気なこともいうしな。これからどんなふうに育っていくかわからないけど、サッカーをやりはじめてたくましくなったし。健康で元気であればいいか)
 
(あーはらへった~)
 
(今晩は、夕飯を作りたくないなぁ。江ノ島散策って結構いい運動になったわぁ。面白かったけど、ちょっとしんどい。この勢いで、中華街あたりで夕飯っていうプランはどうかしら。あのひとのご機嫌次第ね)
 
(江ノ島って結構運動になったな。まさかこんなに山を歩くとは。でも3人だから楽しかった)
 
(あーはやくDSやりてぇな~)
 
(どうすればいいかな。仮病つかっちゃう?でもばれるか。歩いたし日焼けしたからあなたかっこいいわとかいっちゃう?)
 
(いい家族になってきた。これからも仕事をがんばろう)
 
(しゅくだいやだなー)
 
 

自然をみながら静かな時間。人は思う、それぞれ。
 
 
家族のキロク(ショートショート、極短小説)
 
 

(絵:文 ©ハヤテノコウジ)

ぐーるぐーるぐるサラリーマン(ショートショート、極短小説)

 

「極短小説」にインスパイヤされたのでここにショートショートなノベルを記します。
 

東京街角シリーズ
 
 
 
「今回のプレゼンのキーポイントとなるのは、やはりセグメンテーションされたターゲットのペルソナを、ディティールまでこだわったという点をいかにアピールできるかにかかっていますね。プライマリーターゲットを軸に、セカンダリーターゲットを抑えながらプロアクティブなアクティビティをストラテジーに沿って展開していくのが味噌。このあたりのターゲットにリーチするメディアを、リストアップしてみたので課長見ていただけましたか?」

「オンラインメディアに偏りすぎている気がするけど、そのあたりは大丈夫なの?」

「むしろウェブ2.0時代においては、ロングテールなイメージを持たないとだめだと思うんですよね。オンラインメディアでのカバレッジは、ブロガーにリンクされやすいのです。さらに、記事スペースが大きいオンラインメディアをページビューとユニークユーザーの多い順に並べて。」

カタカナ部分で、腕ぐるんぐるん。 
 
 
ぐーるぐーるぐるサラリーマン(ショートショート、極短小説)
 
 

(絵:文 ©ハヤテノコウジ)

違法横断オンナ、高速オババの一刀に(ショートショート、極短小説)

 

「極短小説」にインスパイヤされたのでここにショートショートなノベルを記します。
 

東京街角シリーズ
 
 
 

博多ラーメンを2玉食べた昼休み。少し曇ってきて雨が心配ではあったが、やはりコーヒーを飲んでおくことにした。午後はセキュリティ対策の会議で何時間かかるかわからない。眠気覚ましに選んだフレンチロースト、やたら濃い。オープンカフェっぽくなっている部分に座っている。

目の前の交通量が多いので、おせじにもおしゃれな気分とは言い難い。バス亭にはバスが到着しても全く乗車する気のない婆さんが座っている。その横に、背の高い細身のOLたちが立っていた。まじきも~いを連発、どうやらお客さんの悪口で盛り上がっているようだ。信号は赤だが、どうやら道路を横断しようとしているようだ。「横断禁止」の大きな看板があるが、全く無視らしい。いざ横断しようとOLが足を踏み出すと、いきなり婆さんが起動して2人の足を蹴った。
 
 
違法横断オンナ、高速オババの一刀に(ショートショート、極短小説)
 
 

(絵:文 ©ハヤテノコウジ)

さよならのイーゼル(ショートショート、極短小説)

 

「極短小説」にインスパイヤされたのでここにショートショートなノベルを記します。
 

東京街角シリーズ
 
 
 
 

彼は、いつもそこに立っていた。

半地下にあるレストランへの入口に。

雨の日も風の日も雪の日も。

このあたりは学校が多いせいか、目の前を通り過ぎるのは品のいい小学生か制服姿の女子高生。

共学の女子より女子高の女子のほうがいいかなと、緑色になりながら照れてみた。

レストランの横には貸会議室があるので、ときどき大量のおじさんたちが彼の前で立ち止まった。

「今日はカレーじゃね」

「そうじゃね」

「わしはハンバーグっかな」

「いいんだね」

社会人の研究会も行われることがあって、若いサラリーマンたちも彼の前でよく立ち止まっていた。

「今日はやっぱパスタじゃね?」

「そうじゃね?」

「おれはハンバーグ?」

「ハンバーグやばいね」

なんだか今日は聞き取りにくいなと思った彼だったが、

ごぉうという音とともに宙に浮き、

階段を滑り落ちてレストランへと落ちて行った。

彼がイーゼルの上に復帰できたかは不明である。
 

さよならのイーゼル(ショートショート、極短小説)
 

(絵:文 ©ハヤテノコウジ)

横断歩道でシュークリーム(ショートショート、極短小説)

 

「極短小説」にインスパイヤされたのでここにショートショートなノベルを記します。
 

東京街角シリーズ
 
 
 
「あーーーーーんもう限界です。私、壊れちゃいました。そんな卑怯な手を使う課長とは仕事をしていられません。早引きさせていただきますっ」

「お、おい、平岡さん、ちょ、ちょっと待って」

「社員のメールを盗み見するってどういうことですか」

「い、いや、これも仕事なんだよ」

「仕事のわけないでしょう。人のコンピュータにアクセスして、全プログラムの起動状況までチェックして、いったい何をしているんですか」

「ま、まあ落ち着いて話そう。これはだね」

「もういいです」

「お、おい」

平岡節子は曲がったことが大嫌い。

しかも束縛されるのが許せない。

部長の許可もなく、全社員のメールを盗み見していた課長に嫌気がさし、ストレスがたまっていた。

こういうときはシュークリームに限る。

歩きながらシュークリーム、またコンビニがあったので買ってみた。

今度はホイップタイプ。

もうひとつある。

これはあいつに投げつけるために。
 
 
 横断歩道でシュークリーム(ショートショート、極短小説)
 
 

(絵:文 ©ハヤテノコウジ)

じいさんの日傘(ショートショート、極短小説)

 

「極短小説」にインスパイヤされたのでここにショートショートなノベルを記します。
 

東京街角シリーズ
 
 

ばあさんや、今日はいい天気だね。

いつものラーメン屋には、少し早く行こうや。

え、早く行くとサラリーマンで混んでいるって。

だから、もっと早くていいじゃねえか。

11時くらいに行ってしまおうよ。

え、12時からか、あそこは。

そうかそうか。じゃあじょうがねえ、いつもと同じ1時半にしようや。

え、なんで早くしたいのかって、だって今日はばあさんの誕生日じゃねえか。

ラーメン食ったら翡翠に行って珈琲飲むだろ、そのときにさ、ケーキをさ、ゆっくり食べてえじゃねえか。

実はさ、翡翠のマスターに頼んであんのよ、大きめのモンブランこさえてくれってさぁ。

あ、いっちゃったよ、秘密にしといたのになぁ。

ガハハァァハハハ。

ゲホォゲホホホホホホホホゲホォホホホホホホ。

そういえば区民会館の横のラーメン屋はつぶれたらしいね。

となるとラーメンはあそこだけか。ナァ

彦治、おばあさん愛用の日傘を持って歩く。誰かに話しかけながら。おばあさんの命日。
 
 
じいさんの日傘(ショートショート、極短小説)

(絵:文 ©ハヤテノコウジ)

オフィス街のギャオス(ショートショート、極短小説)

 

「極短小説」にインスパイヤされたのでここにショートショートなノベルを記します。
 

東京街角シリーズ
 
 
 

 フリーの自転車便ビジネスを始めて1か月が経過した。

まさか、ビジネスになるとは思わなかったが、思いのほか受注できた。

といっても入金はまだ先なので、今は会社員時代の貯金で暮らしているのだが。

足となる自転車は、できるだけ普通のものを選んだ。

いかにもメッセンジャーボーイというのが嫌だったのだ。

ちなみに私は女性だし。

自転車に乗るのは久しぶりだったので、若者がよく乗っている車輪が小さいタイプにした。

これが正解だった。気軽なお姉さん、と覚えてもらえるようになった。

まずはビルの警備員と知り合いになり、無理やりチラシを貼ってもらった。

これもあたった。さらに、料金を抑えに抑えた。というのも、お金儲けが目的ではなかったからだ。

私はあいつを探している。

私の渾身のパースをぶち壊した、自転車のアイツを。

怪獣の鳴き声のような車輪音をまき散らし、渋谷の坂という坂を走り回るあの男を。

警備員の話だと、今日はこのビルにくる。
 
 
 
 
オフィス街のギャオス(ショートショート、極短小説)
(絵:文 ©ハヤテノコウジ)

全身サッカーな人(ショートショート、極短小説)

 

「極短小説」にインスパイヤされたのでここにショートショートなノベルを記します。
 

東京街角シリーズ
 
 
 
この瞬間がたまらない。

この、遠征のあとにそのまま出社する。

サラリーマンであって普通のサラリーマンではない。

私はサッカーをこよなく愛しているのだ。

夜行バスで東京に戻り、サウナに行き、気持ちよくなった瞬間にサポーターでよかったと思う。

わがチームの今季の成績は振るわないが、仲間たちと夢中になって応援した結果、昨晩は勝利したのだ。

この興奮のまま、眠れず、バスに揺られた時間が心地よかった。

出社だから、スーツじゃないのかって。

いや、私はレコード会社のディレクターなのだ。

そんなものはいらない。

だから、いつだって全身サッカーなのだ。

シャツ、パンツはもちろん、タオルだってサッカー。

ヘアスタイルもサッカー。

バックもサッカー。

通っていたサッカー用品店がなくなってしまったので、実は数年前に買ったのが最後だ。

他の店に行きたいが、若者が多くて苦手なのだ。

全身サッカーで、満員のエレベータに乗った。

OLが少し顔をゆがめた。
 
 
全身サッカーな人(ショートショート、極短小説)
 
 

(絵:文 ©ハヤテノコウジ)

うなだれるサラリーマン(ショートショート、極短小説)

 

「極短小説」にインスパイヤされたのでここにショートショートなノベルを記します。
 

「極短小説」にインスパイヤされたのでここにショートショートなノベルを記します。
 

東京街角シリーズ
 
 
 

 

「・・・・ぼぇけえぇ!ガチン」

関根課長に本日の営業報告をした後、携帯電話を投げたくなった。

必死で飲み込んで、缶コーヒーでも飲んで気を落ち着かせようと自機の前に立ったそのときだった。

得意先の人事部長から電話がかかってきた。

派遣社員に関する請求書の到着タイミングが遅い、もっと早く出せという話だった。

システムの都合上、早くできない。でも最善を尽くすよう調整してみるという旨で一応納得してもらった。

「ガチャン」

自販機から朝専用のコーヒーを取り出し、プルを引いた瞬間、また携帯電話が鳴った。

驚いて股間のあたりにコーヒーが落ちた。

ハンカチを取ろうとして携帯電話を落とす。電話が切れる。

「チッ」と言って携帯電話の無事を確認し、缶コーヒーを一口飲むとまた電話。

出るとさっきの人事部長。キレている。確認はできたかという。

できていないと言って缶コーヒーが倒れ、頭抱える。
 
 
うなだれるサラリーマン(ショートショート、極短小説)
 

(絵:文 ©ハヤテノコウジ)

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...