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占いが気になるからって(ショートショート、極短小説)

東京電車シリーズ
 
 
 

ヤフーの占い、3日つづけて50点に達しなかった山田山課長は、いらついていた。

インターネットのことはわからないが、ヤフーだけは使える。

トップページに、いつのまにやら占いが表示されるようになった。

しかも、なぜか自分の星座を知っている。

ヤフーはすごいな、と、カップめんをすすりながらひとりランチした。

最近はカップめんも高くなり、微妙に量も減っている気がしてならない。

ヤフートピックスでは、柔道家とアイドルが結婚してどうだこうだとやっている。

カップめんを飲みほした山田山課長、占いをじっくり見るが、今日も50点に達しない。

いったいどういうことなのだ、ふん。

山田山課長、小遣いを減らされたので、定時に会社を出て、すぐ帰る。

満員電車の中ではかならずモニターの見えるところに立つ。

今日は電車が遅れていて、混んでいるので奥に押し込まれてしまった。

ああ、占いが始まった。自分の星座の番だ、ああ、見えない。

こいつ、押しのけて、次の駅で降ろされる。
 

 
 「占いが気になるからって」挿絵(ショートショート、極短小説)
 

通勤電車の友(ショートショート、極短小説)

東京電車シリーズ
 
 
 

福岡に出張したとき、「昔、よくテレビで流れていた満員電車の風景って、もうないのですよね」

と九州支社の事務員がつぶやいた。残念ながら、日常の日常なのである。

満員電車に乗り、会社に向かう。そして満員電車に乗り、家路につく。

路線によって様々だが、多くのJR、私鉄での通勤・通学の時間は苦痛である。

特に梅雨の時期と真夏、そして冬。室内温度と外気温の差が乗客の肉体的精神的バランスを奪っていく。

しかしながら、慣れた人々はそれぞれの過ごし方を持っている。

ひたすら音楽にのり、体をゆらす若者。

器用に新聞を折りたたみ、文字を追う熟年の会社員。

mp3プレーヤーで語学学習するビジネスマン。

一目を気にせずマスカラを付けるOL。

携帯電話でニュースをチェックする若手社員。

携帯ゲームに夢中な浪人生。

ツワモノはおにぎりをほおばっている。

私にとって、中づり広告が唯一のメディアである。

目のやり場に困ったら、中づり広告を見ればいい。

とてつもなく退屈だが、両手を吊革にのばして。今日もすました顔してみる。
 
 
「通勤電車の友」挿絵(ショートショート、極短小説)
 

(絵:文 ©ハヤテノコウジ)

はなほじり(ショートショート、極短小説)

東京電車シリーズ
 
 
 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ええっと、分社化の件だった。わが部署が、不採算状況が続くので、本社から分離して整理することになってっと。それで場所は変わらないし、仕事の仕組みも変わらないけど」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「あ、でも部下のクリモトがなんだか不満をぶちまけて部内の雰囲気が悪くなっているのはまずいな;あ;;あ;あ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 
 
「はなほじり」挿絵(ショートショート、極短小説)
 

(絵:文 ©ハヤテノコウジ)

オンナの手帳(ショートショート、極短小説)

東京電車シリーズ
 
 
 

8月。東京、山手線。

大塚駅到着。オンナ、扉左手前に立つ。モレスキン手帳、白紙。

池袋駅到着。乗客多数乗降。オンナ、車両中央部に移動。モレスキン手帳、白紙。

目白駅発車。オンナ、鞄からボールペンを取り出す。モレスキン手帳、白紙。

高田馬場駅発車。西武新宿線より多数の乗り換え客。オンナ、鉄腕アトムの発車サイン音が耳に入る。モレスキン手帳、白紙。

新大久保駅到着。満員電車にベビーカーの乗客、子供大泣き。モレスキン手帳、白紙。

新宿駅到着。乗客多数乗降。反対側の総武線に乗ろうと焦る中年男、女性とぶつかり口論。細身ガードマン、巨漢ガードマンが到着、2人の事情を確認する模様。オンナ、中年男に見覚えあり。会社のお客。モレスキン手帳、白紙。

すぐに代々木駅。

原宿駅で多数の降車あり。オンナ、乗ってきた老人に席を譲る。

品川方面左側乗車口手前に立つ。モレスキン手帳、若干のペンの跡。渋谷から品川まで手帳を眺めるオンナ。動きなし。
 
 
「オンナの手帳」挿絵(ショートショート、極短小説)
 

(絵:文 ©ハヤテノコウジ)

パンダかよ!(ショートショート、極短小説)

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8月、午後4時、西荻窪。アケミ、出勤のために総武線に乗る。乗ってすぐミラーを開く。

最近、店では絶好調で指名も増えてきた。売上トップのヨウコさんまで、もう少し。気分いいわぁ。最近は沼田さんまで指名してくれたし、今日は同伴出勤できちゃうし。うふ。

胸が痒い。最近、ちょっと下がってきたのがわかる。今月はどれくらい稼げるかなぁ。わくわくする。でも、ワタシ、ヨウコさんを抜こうとは全く思ってなくて、ただそれなりにかせげればいいし。

でもね、この急に人気が出た秘密って、実はあるわけ。それはアイシャドウ。パンダみたいに、これでもかって、すこしおおげさにやってみたら、男の人たちが目のあたりを見るようになる。そこでバチゥと目をウィンクして、ちょっと胸元をよせて見せればイチコロ。沼田さんもこれが気に入ったみたい。ふふふ。

そういえば、最近ヨウコさんといっしょにならないなぁ。いろいろテクを盗みたいのに。
 
 
「パンダかよ!」挿絵(ショートショート、極短小説)
 

(絵:文 ©ハヤテノコウジ)

オババの懸垂(ショートショート,極短小説)

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7月、梅雨明けの日。19時30分、新宿を出た満員電車。信号機トラブルにより遅延した電車の中は、通常より多めの会社員、OL、学生で混雑している。汗のにおい、整髪料のにおい、髪の毛のにおい、香水、とてつもないにおいなどが充満する。隅田瑞男はそれでもトラブルの起きていない車両で安心しきっていた。その危ういにおいをキャッチするまでは。

人間の五感はいろいろあるが、臭覚だけは脳にダイレクトにつながっているとかで、においでのストレスは耐えがたい衝撃を与える。今回は、人ごみの中で上下運動を繰り返し、頭をひょこひょこ出しているオババが源だった。オババ、半そでTシャツを肩までまくり、吊革を2つつかんで懸垂運動をしているのである。しかも、わき毛が見える。漂うにおいも、強烈なもの。隅田瑞男、別のイメージを浮かべ、臭覚ロードにバリアを張ろうと努力。途中、におい攻撃に耐えながら。

「オババの懸垂」挿絵(ショートショート、極短小説)

(絵:文 ©ハヤテノコウジ)

ああつかまりてぇ(ショートショート,極短小説)

東京電車シリーズ

1月、午前8時30分、山手線。「ああつかまりてぇ」合戦、スタート。

「昨日は倉庫整理をやらされて、足腰がいてえぇんだ私45歳課長、課はもうないけどね、ああつかまりてぇ」

「今朝から弁当を3つも作り、さらに私も出勤ってどういうこっちゃ私50歳パート、最近お腹の肉が気になるけどね、ああつかまりてぇ」

「やべぇよ1限遅れるよ一夜漬けのレポート書いて寝てねぇんだ私21歳大学生、サークル作ったら部長の俺より広瀬のほうがもてるけどねああつかまりてぇ」

「孫だ孫だと大騒ぎする妻にいやみをいったら、朝飯の味噌汁をぬるくされたよ私60歳定年間近、実は会社設立準備中、妻には内緒だけどねああつかまりぇ」

「移動豆腐屋が儲かるっていうので、研修研修で疲れています私35歳ロスジェネ、会社勤めは疲れたので脱サラします妻には内緒だけどねああつかまりてぇ」

「今日はデートなのになぜか肌の調子が悪い29歳OL、武器は谷間ぜったい最後までもっていくぞ年下男つかまえるぞああつかまりてぇ」

ああつかまりてぇ

「ああつかまりてえ」挿絵(ショートショート、極短小説)

(絵:文 ©ハヤテノコウジ)